『猫の地球儀』(秋山瑞人:メディアワークス電撃文庫)

猫の地球儀(秋山瑞人メディアワークス電撃文庫)」を読了。
2巻完結なのですが両方読みました。

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地球を周回しているコロニー「トルク」は、
昔に滅びた人が残した人工知能を持ったロボットと、
知性を持った猫が暮らす世界。
そこで政治を行う「大集会」は、
死んだ猫の魂は「地球儀(地球のこと)」に飛んでいくという言い伝えを説いていた。

「トルク」には、「地球儀」に行きたいという猫の集団「スカイウォーカー」がいた。
「大集会」はこれを異教徒と見なし弾圧する。
そして生き残った末裔の「幽(かすか)」は
幼いころからずっと一人ぼっちであったが
先代までの研究の成果を持ったロボット「クリス」と出会い、
「地球儀」に行くことを決意する。

一方「トルク」では「スパイラルダイブ」という国民的闘技があり、
無名の実力者「焔(ほむら)」は、
2年間ディフェンディングチャンピオンの座を守っていた「斑(まだら)」にあっけなく勝ってしまう。
焔はチャンピオンの座に伴う絶大な権力を手に入れるが、
自分が求めていた強さというものがなんであるか迷い、
自分の無名のころからのファンである「楽(かぐら)」と共に権力を捨てて放浪し始める。

「地球儀」に行くための宇宙船の研究を
隠れて続けながらいろいろな知識を身につけていく幽だったが
「大集会」に見つかりそうになってしまう。
そこでアジトの周辺に問題児である焔を居座らせ「大集会」の目をそらそうと
焔に非公式な試合を挑み、簡単に倒してしまう。

見事に幽の策略にはまった焔は
幽に勝つために再戦を申し込むが拒否される。
これさえも自分に焔を惹きつけようとする幽の策略であった。

そのうち、楽は焔に世話を焼き焔の心を癒していくと共に
幽と知り合って幽の心も癒していき、
また、幽は本当は友達がほしいのだということを自覚させていく。

楽に本音を気づかされた幽は、
焔と仲良くなりたいと思うと同時に
仲良くなったとしても自分と焔は夢を求めるしかないということも悟り、
焔とのライバル心とも友情ともつかない感情に決着をつけるため
自分から焔に再戦を申し込んだ。

そうして焔と幽は再び戦い、今度は焔が幽を追い詰めた瞬間、
二匹は、「大集会」に幽との関係を知られてしまった楽が殺されるのを見てしまう。
焔は怒り狂い「大集会」を皆殺しにし、
幽は自分の夢が他人をどれだけ傷付けるのかを思い知る。

焔は幽のせいで楽が殺されたことのケリをつけようと
「明日の正午にここで待つ。
もしこなかったらどこまでも追いかけておまえを殺す。
死に場所は自分で選べ」
と言い放つ。

幽はそれでも「地球儀」に行くことを決意し、次の日の正午に飛び立つのだった。
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てな感じのストーリーです。
自分で書いていても良くわからんので是非1度読むことをお勧めしますww

自分の夢、理想を追い求める2匹が
自分の夢はなんなのか、
自分の夢が人をどれだけ傷付けるか、
夢を追い求めるのは悪いことなのか、
なんてことを考えていくってわけですね。
なかなかテーマがはっきりしていたように思います、

秋山氏の作品は下で挙げた「イリヤの空、UFOの夏(電撃文庫)」も読んだのですが、
こちらも結構雰囲気が似ていました。
イリヤ」は結局伊里野がどうなったかはわからず終いで(一応示唆する文はあるが)
それでいて納得の行く完結の仕方でしたが、
猫の地球儀」もやっぱりどうなったかはわからないけれど
納得の行く完結でした。
この人は落とし方がうまいなぁ…