池袋ウエストゲートパーク(石田衣良:文春文庫)

本日、『池袋ウエストゲートパーク』(石田衣良:文春文庫)を読了する。

第36回オール読物推理小説新人賞を受賞した表題作と
その続編3編の計4編の連作集。
4TEENという作品で直木賞を受賞された石田衣良氏のデビュー作。
2000年に長瀬智也主演でTBS系でドラマ化。
ヤングチャンピオンでコミック版も出ている模様。

で、読み終わったわけだが中々面白かったと思う。
ジャンル的にはミステリーやらサスペンスに分類されるらしいが
普通の謎解きと違って舞台が池袋のストリートということで
とても軽快に読めていい感じ。

表題作の「池袋ウエストゲートパーク」はセリフ率が多く厨っぽくて読み難かったものの
「エキサイタブルボーイ」「オアシスの恋人」「サンシャイン通り内戦」は軽々及第点を突破。
読みやすく面白い。

この作品群は主人公が池袋の危機に立ち向かう(多少誇張)様を一人称視点から描いたものであるが
この語り方がとても大人びているというか落ち着いているため
主人公視点というよりは主人公の俯瞰視点という感じ。
また、主人公が感情移入しやすいタイプに描かれておらず、
正義感はあるんだけど熱血ではないような感じで割とキャラをつかみづらい。
であるので読者は主人公というよりは外の視点から物語を見るような形になる。
主人公は多分池袋のことが好きなのだろうが
それを表しつつ強調しないあたりが好感を持てる。

また、その他の登場人物が立っていないように感じる。
皆キャラが淡々と描かれているので
本当にノンフィクションを読んでいるように思えてくる。
多分これによりクスリやらの問題も軽めなタッチで描かれて読みやすくなっているのではなかろうか。

サスペンスとしては池袋という舞台が雰囲気を引き立てていると思う。
普通に事件解決は奇抜な方法でやっているわけではないのだが
飽きさせないようなつくりになっていて良い。

テーマとしてはよくある話ではあると思うが
一応、読んだ後へぇ〜で終わることはなく、
なにかしら考えさせられるので読後感もいい感じ。


正直言って最初の表題作を読んだときは駄作だと思ったが
めげずに読んだら後3作はかなり面白かった。

続編も出ているようなので読んでみたいと思う。